東京工科大学 応用生物学部 多田研究室

研究内容  

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植物の機能を遺伝子レベルから個体レベルで高めて利用する研究に取り組んでいます。

特に、ストレス耐性(耐塩性や耐乾性など)に注目しています。

◆野生シバの耐塩性機構に関する研究

– 沖縄の海岸線に生育する耐塩性のシバであるソナレシバの耐塩性遺伝子を同定するための研究を行なっています。ソナレシバは、海水の3倍の塩濃度である1500mM NaClで処理しても生存できます。ソナレシバの遺伝子を導入した中から耐塩性の向上したシロイヌナズナが得られています。塩処理したソナレシバでは、特異的な転写因子が発現し、アミノ酸や2-オキソ酸生合成経路が活性化されることがわかりました。

 

西表島の海岸線のソナレシバ

低カリウム(0.1 mM K+)培地での根の生育
左の2系統がSvHKT2の組換え体、右が通常の植物(WT)

  • ソナレシバのカリウムトランスポーター(SvHKT2)遺伝子を組み込んだ植物は、低カリウム条件でもカリウムとナトリウムを根から取り込むことで根の成長を維持することができます(図参照)。SvHKT2(SvHKT2;1とSvHKT2;2)を構成的に発現する組換え植物は耐塩性が弱まるものの、SvHKT2を維管束細胞特異的に発現させると耐塩性が高まることを見出しました。他の実験結果と合わせて考えると、SvHKT2はカリウムの吸収よりも地上部への輸送で重要な役割を果たしている可能性が示唆されています。また、ナトリウムトランスポーターであるSvHKT1;1は、過剰なナトリウムをシュート(茎葉)から根に還流させることで耐塩性に貢献していることを見出しました。これらの遺伝子を利用することで耐塩性の強化やカリウム肥料が不要な作物(低肥料作物)の開発が可能かもしれません。他の野生シバのカリウムトランスポーターについても解析しています。

◆マングローブの耐塩性機構の解明

・マイクロアレイを利用した塩処理したオヒルギの遺伝子発現プロファイリングと塩応答性遺伝子の機能解析
– 塩処理(500mM)したオヒルギの12000遺伝子の発現の挙動をマイクロアレイという手法を使って調べます。その結果から、耐塩性に関係していると考えられる遺伝子を選抜します。選抜遺伝子をイネやシロイヌナズナに導入して得られる組換え植物の耐塩性を検定することで導入した遺伝子の機能を確認します。耐塩性を向上させる遺伝子がいくつか見つかっています。

・塩処理したオヒルギの生理学的解析
– 塩処理(500mM)したオヒルギの光合成速度、各種イオン含量、糖含量、形態的な変化を調べました。

◆低リン酸耐性植物とリン酸有効利用植物の開発

 – リン酸トランスポーターの強化によって低リン酸条件でも生育可能な植物の開発を目指します。リン酸は植物が必要な三大栄養素(窒素、リン酸、カリウム)の一つですが、リン酸肥料の原料のリン鉱石は石油よりもはやく枯渇すると言われています。

– リン酸の取り込みと輸送に関与するリン酸トランスポーターを植物全体で強化した場合は生育阻害が見られますが、根の表皮に特異的に発現させることで、リン酸の吸収・利用効率が高まり、成長を2倍に促進することに成功しました。

– さらに、リン酸トランスポーターを維管束(導管伴細胞)で強く発現させた場合にも根から地上部へのリン酸輸送能力が向上し、成長促進と種子へのリン酸蓄積量の向上が認められました。

– これらの成果は、リン酸肥料が不要な植物の作出に利用できる可能性があります。

◆ヤトロファ(ジャトロファ)の耐乾燥性機構に関する研究

– 乾燥に強く(2年間水やりなしでも生存可能)、バイオディーゼルの原料となる油を含む種子を生産するヤトロファ(ジャトロファ)の耐乾燥性遺伝子を同定するための研究を行なっています。乾燥処理したヤトロファの茎と根のメタボローム解析を理化学研究所と共同で実施し、乾燥応答性の代謝産物を同定しました。

◆DNA検定によるおコメのトレーサビリティーの確保 →  技術シーズ

– おコメの生産者や栽培方法をDNA鑑定で証明する方法を開発しています。

◆イネの穀粒成分の改変に関する研究

– イネの機能性を高めるために遺伝子レベルの研究をしています。

◆屋上緑化に関する研究

– つる性植物のクズを利用した屋上・壁面緑化方法を検討しました。これによってヒートアイランド現象の緩和、二酸化炭素(CO2)固定とバイオマス生産の一石三鳥を目指しています。

◆シシトウが辛くなるわけを探る

- シシトウはカプサイシンを産生しなくなったトウガラシの突然変異体ですが、同じ遺伝子型である(同一のゲノム配列を持つ)一つの個体に辛い実と辛くない実の両方が実ります。従って、辛い実がなる理由は特定の遺伝子の有無では説明がつきません。これまでの研究で、辛い実ではカプサイシン合成経路の酵素の全遺伝子が高発現していますが、辛くない実ではこれらの酵素遺伝子は発現している遺伝子としていない遺伝子に分かれます。このような遺伝子の発現制御の仕組みについて調べています。

◆ポトスの空気浄化能に関する研究

– ポトスが持っているホルムアルデヒド浄化能を高めるための研究をしています。ポトスや微生物由来のホルムアルデヒド脱水素酵素遺伝子を導入したシロイヌナズナでは、ホルムアルデヒド分解能力が高まりました。
 ポトスのホルムアルデヒド浄化能力の確認、ポトスの形質転換系の確立、組換えポトスの作出と評価を行いました。

◆活性酸素種生成を指標にした植物のストレス耐性強化剤や除草剤の探索

- 活性酸素種(ROS)は様々なストレス処理によって生成し、生物にとって重要なシグナル物質であると同時に障害を引き起こす「毒」でもあります。ROS生成を抑制する化合物がスクリーニングできれは、ストレスに強くするサプリメントとして利用できる可能性があります。逆にROS生成を活性化する化合物は除草剤として利用できる可能性があります。これまで知られている除草剤のリード骨格と異なる化合物で除草効果を示すものを見出しました。また、除草剤の種類によっては、細胞レベルと個体レベルで効果が異なる場合があることがわかりました。

◆高品質イチゴ品種と甘いイチゴの栽培方法の研究

- 栽培環境などを制御して甘いイチゴを周年生産する方法を研究しています。各種の添加物の効果を検証しています。最高で糖度が20度以上のイチゴが実りました。

  • また、交配により東京工科大学オリジナルのイチゴ品種の候補(仮称:東京紅香(とうきょうこうか))を作出しました。平均糖度が約20度で甘く、香りの高いイチゴです。果肉は柔らかめです。このイチゴ品種の実用化を目指しています。興味ある方はtadayui@stf.teu.ac.jpまでご連絡ください。

◆カンゾウのグリチルリチン含量を高める栽培条件の検討

  - 漢方薬として利用されるカンゾウのグリチルリチン含量を高める栽培方法を検討しています。支持体を用いた水耕栽培により挿し芽から8カ月程度で日本薬局方の規定(2.5%)を超える2.64%のグリチルリチンを含む肥大根が得られました。グリチルリチン含量をさらに高める方法を検討しています。

◆水素水がトマトの糖度に与える影響の研究

  - 水素水がトマトの糖度に与える影響を研究しています。

◆高温耐性に関する研究

  - 亜熱帯地域(沖縄)に自生するソナレシバの高温耐性に関与する遺伝子をスクリーニングしています。地球温暖化に対応した高温耐性植物の作出を目指しています。

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